弁護団長のご挨拶

matsuba

 弁護士 松葉知幸
 (大阪弁護士会)


 企業のコンプライアンスが問われる事件が相次いでいます。今回の、三菱自動車工業の燃費偽装事件だけでなく、東芝の不正経理事件、旭化成子会社の杭打ち工事データ改ざん事件、東洋ゴム工業の免震パネルデータ改ざん事件など、枚挙にいとまがありません。技術力と信頼を標榜するこうした大手企業の不正は、コンプライアンスが掛け声だけになっていること、そして日本企業の体質の劣化を意味しているように思います。
 三菱自動車は、燃費偽装車両の購入者に対して、金10万円の賠償金を支払う方針を公表しています。しかし、偽装という悪質な行為により消費者を永年欺いて販売を続けた行為が、これで不問に付されてはいけないと思います。購入者の被害は様々で、10万円を超える損害を被った人は多くいると思います。企業の不正のしわ寄せは結局、消費者・購入者が負担することになります。
 私は、永年、消費者事件に関わってきましたが、利益のために不正を行った企業は、最後まで自らの利益を優先することが多いのです。一方、消費者は、不特定多数で、組織もありません。一人一人の消費者の損害は、巨額の利益を守ろうとする企業との力関係で常に不利な地位に置かれます。そのような構図の中では、大企業による不正は、容易になくなりません。
 この弁護団は、消費者の視点で車両購入者の方々の被害救済を少しでも図るとともに、企業がコンプライアンスを重視し、健全な契約社会ができることを目指して活動したいと思います。